パリ人気質と妊婦への意外な優しさ
6年前に住んだとき、パリ人はなんてつっけんどんで容赦なく気を使わない人たちなんだろう、と思ったことが何度もあった。ここで「パリ人」(通常、パリジャン(男の人)パリジェンヌ(女の人)と呼ぶ)は「フランス人」全体を指していないことを強調したい。パリ出身のフランス人は独特の気質があると思う。これは日本でも地方出身の人と東京で生まれ育った人の間にはやはりなにかしら文化や考え方の違いがあるのと一緒だと思う。プラス、6年前に着いた当初は私はまったくフランス語が話せなかったので、それまでずっと英語派だった私としては、パリは「英語が通じない、怖くて面倒な所」で、さらに「英語で話すといじめられる場所」のイメージがさらに固まっていた。
その頃経験したことを少し挙げると、まずパン屋でのこと。私が注文しようとすると店員のおばちゃんは、私が話す前に眉間にしわを寄せて「この外国人ちゃんとフランス語話せるのかしら」という顔をする。私の順番の前に白人の女の子が注文したときには笑顔で注文を受けていたのに、私の番になったとたんに眉間のしわが現れ、声が1オクターブ低くなる。さらに私が小銭でパン代を払おうと手こずっていると「ウララー!」(あーまったく!)と文句を言われる。パン屋ではいつもなぜかいじめられているような気分だった。
初めてフランスで婦人科の女医に診てもらったときのこと。こちらでは医師への支払いは受付や会計の人ではなく、直接医師に渡すことになっているので24ユーロを現金で支払おうとすると、おつりの手持ちがなかったその女医は、「あー頭に来るわ!むかつく!」と独り言なのか私に向かってなのか叫び始めた。あまりにショックを受けた私は「ごめんなさい」と自動的に反応して言ってしまった。なんでお金を払って文句言われなくちゃならないんだ!!
その他にもバスの中で座っていると、「あなた、私より若いのだから席を譲って頂戴!」とどつかれたりして、パリでは神経が相当図太くないと生き延びていけないなぁ、という結論に至った。よくよく考えてみると、嫌な目にあわされたのは大体が50~80歳代のおばちゃん・おばあちゃんたちからである。パリのオバ(ア)タリアンは世界最強では、と真剣に思ったほど。大阪のおばちゃんたちもこれには太刀打ちできそうもない。これとは対照的に、パリでは年齢を問わず男の人からはいい思いばかりをさせてもらった。道を歩いていても普通にほめられたり、いつも目が合うとニコリと笑顔で返されたり、嫌な思いをしたことは一度もなかった。さすが噂どおりの、「女の人には優しいパリジャン」である。
ところが、今回妊娠して戻ってきたパリは前回の経験とはあまりに違うので正直言ってびっくりしている。なんといっても、あの無敵オバタリアンたちが私に対してとても優しい!!いったい何が起こったのかと思ったら、なるほど私妊娠していたのよね。バスに乗れば必ず誰かが席を譲ってくれるか、「妊婦がいるから誰か席を譲ってあげて!」とあの恐ろしいおばちゃんたちが叫んでくれたり…(すごすぎる…)。夜中近くに長い列のタクシー待ちをしていると、必ずおばちゃんが大きな声で「ちょっとあなた!!列の一番前にいらっしゃいよ!!妊婦なんだから!」と叫ぶので、私も他の人も怖くて何も声を出せない状態。郵便局でもスーパーでも薬局でも洋服の試着でも、どこでも一番に通してくれる。すごすぎる、この妊婦優先体制。どおりでフランスの出生率は現在ヨーロッパ1位であるらしい。
それにしても、パリのおばちゃんたちの妊婦への配慮はすごすぎる。やはり自分たちが大変だった経験をしているからだろうか… いずれにしても東京にいるよりもいろんな面で優遇されているなぁと感じた。